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地域は、みんなの学校だ!
大人も子どもも、高齢者も障害者も、みんなが学び合い育ち合うまちを目指す、
鳴尾東の“まちのプロデューサー”田村幸大さんの物語。

すごいすと
2020/07/10
田村幸大さん
(33)
兵庫県西宮市
NPO法人なごみ

個人紹介

田村幸大(たむらゆきひろ)33才。昭和61年生まれ、明石市出身。大学3回生の時、教育現場を変えたいとの想いから「自分たちが行きたくなる学校をつくろう」と、有志学生10名と共に学生団体を設立。京都の廃校舎を活用した社会教育活動に取り組み、卒業後NPO法人化。オファーを受けた西宮市内の各地域を中心に、キャンプや職業体験などの出張授業を提供した。平成25年2月、地域に密着した活動を目指し、西宮市に「鳴尾東ふれあいまちづくりの会」を発足。平成26年7月には「NPO法人なごみ」として、子どもから高齢者、障害者まで、すべての住人が安心して暮らし続けられるまちづくりに取り組んでいる。

 

「こんなことがあればいい」「あんなこともできる」。自分のアイデアの実現に向け主張していった地域づくり。しかし、それだけではうまくいかない現状を受け入れた時、まちが少しずつ動き始めました。
「地域づくりは、その地域に学ぶことだと気が付いてから、地域が変わるきっかけが見え始めました。」
動かなかったものが前進し始める、小さな変化を感じられることが楽しいと話す田村さん。壁も悩みも楽しみに変換してしまう軽やかさと丁寧な思考力で、地域住民に寄り添いながら取り組むまちづくりについて、お話を伺いました。

 

 

「実は2回お願いして、2回とも断られたんです。」
7年前、社会教育の理想形を目指し、西宮市鳴尾東地域に子どもたちの「つどい場」をつくろうとした田村さん。しかし、当時の自治会長からは「OKは出せない」という返事が返ってきました。
「地域に新事業を応援するエネルギーがない。始めたとしても、続けていけるか不安だという理由でした。」 そんな会長の気持ちを変えたのは、田村さんの覚悟でした。
「地域の方には見守っていただくだけでいい、事業に成長するまで継続することを約束しますと伝えると、そこまで覚悟を決めたのなら、応援しようと言っていただきました。」
こうして平成25年2月、有志と共に「つどい場 和(なごみ)」を誕生させた田村さん。昔からの地域行事にも積極的に参加するうち、あることに気付きました。

 

西宮市鳴尾東地域に平成25年2月「つどい場 和(なごみ)」が誕生

西宮市鳴尾東地域に平成25年2月「つどい場 和(なごみ)」が誕生

 

「つどい場 和(なごみ)」は、地域の子どもからお年寄りまでが交われる場所となりました

「つどい場 和(なごみ)」は、地域の子どもからお年寄りまでが交われる場所となりました

 

「私より地域のみなさんのほうが、子どもたちの学びについて真剣に考えていらっしゃったんです。社会教育の場を生み出すエネルギーと機会が、地域の中になかっただけでした。だから、いきなり社会教育活動を始めるのではなく、まずは地域のコミュニティ力をもう一度強くすることが大切だと思いました。」
一方で、子どもだけでなく高齢者や障害者も集まり始めたつどい場の様子を目の当たりにし、多世代交流の面白さと必要性を実感。活動の一歩目を子どもたちのための場づくりから、多世代のための地域づくりへと、舵を切ることにしたのです。
そんな立ち上げから1年半が過ぎた頃、介護保険制度の改正に伴い、「つどい場 和」が高齢者の交流拠点として市の委託事業に決定。NPO法人化と共に「まちcafeなごみ」としての新たな取り組みが始まりました。活動を続けていく中、地域の居場所は様々な世代が集まるからこそ助け合える関係が生まれ、普段の生活につながっていくものであること、そのために地域づくりは共生型事業でなくてはいけないことを、田村さんは改めて確信したのです。
そんな田村さんと鳴尾東地域に、2年後、大きな転機が訪れます。学生たちとの出会いでした。

 

「つどい場 和」は、NPO法人化と共に「まちcafeなごみ」として始まりました

「つどい場 和」は、NPO法人化と共に「まちcafeなごみ」として始まりました。

 

「まちcafeなごみ」では、多世代参加型夕食会「なごみで晩ご飯」も毎月3回開催されています

「まちcafeなごみ」では、多世代参加型夕食会「なごみで晩ご飯」も毎月3回開催されています

 

地域を動かした、学生たちの声

 

「鳴尾東地域で、いろいろな活動に取り組みたいんです。」
平成28年7月、関西学院大学社会学部のゼミ生たちがやってきました。田村さんは、学生たちにまず地域のニーズ調査を提案。一年間をかけ地域資源や課題の調査を住民と一緒に行いました。
「その結果、見えていた課題が整理され、見えていなかった課題が明らかになりました。それらを地域で共有した時、課題の原因や手をつけ始めるところが明確になり、様々な地域プロジェクトを始めるきっかけが生まれたんです。」
特に、地域住民と学生の間で課題の捉え方が違ったことが、興味深かったと言う田村さん。
「若い担い手が出てこないと思っている地域住民に対し、学生たちは、そもそも新たな担い手を受け入れる環境が地域の中にないのではないかと言ったんです。」
この学生たちの声をきっかけに、地域の意識が少しずつ前を向き始めることになりました。若い担い手を発掘し、受け入れ、育てる環境づくりに地域を上げて取り組むことを決めたのです。
「そのために、まずは自分たちのまちを地域全員がもっと知って考えるためのプロジェクト、『地域(まち)のがっこう』を立ち上げることになりました。」
内容の模索に1年、試行に1年をかけ、3年目には西宮市との協働事業としてスタート。地域の人を講師に、地元の仕事や歴史を学び合いました。4年目の今年度は、地元の小中学校と連携し、より若い世代を巻き込む「がっこう」づくりに動き出しています。
こうした様々な活動への取り組みを通し、少しずつ地域力を強めていった鳴尾東。そして令和元年には、年月をかけて温め続けたまちづくり事業がスタートしました。

 

平成28年7月より始まった、住民と関西学院大学社会学部のゼミ生が連携した「鳴尾東つながるプロジェクト」地域報告会では、地域の重要な課題を参加者と再確認しました

平成28年7月より始まった、住民と関西学院大学社会学部のゼミ生が連携した「鳴尾東つながるプロジェクト」地域報告会では、地域の重要な課題を参加者と再確認しました

 

平成30年9月、住民主体の学び場「地域(まち)のがっこう」が開校

平成30年9月、住民主体の学び場「地域(まち)のがっこう」が開校

 

なくすことが目標の事業、「まちのよろず屋」

 

地域の住人同士が、日常の困りごとをワンコインで手伝う取り組み「まちのよろず屋」。この度の新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴う外出自粛時にも、支援の手が届きにくい高齢者を中心にサポートを続け、今では地域に無くてはならない事業のひとつです。

 

ワンコインで手伝う取り組み「まちのよろず屋」

 

鳴尾東ならではの特徴は、有償ボランティア事業と既存の無償ボランティア事業が連携して展開されていること。この仕組みをつくるため、4年もの歳月が準備に費やされました。
「無償の活動と有償の活動を上手くリンクさせるためには、ボランティア活動に携わっている人たちから、『鳴尾東地域には新たに有償で助け合える仕組みがいる』と声を上げてもらうことが必要でした。その発声までの4年間でした。」と田村さんは振り返ります。
「当時、ボランティアセンターへの相談は年間ほぼゼロ件。『今助けて欲しいのにすぐ動いてもらえない』『年配の登録者では応えてもらえない』『無償では気を使って頼みにくい』といったことが原因でした。ボランティアセンターの見直しと同時に、誰もが頼みやすい仕組みも地域に必要だという声が、話し合いの中で自然と生まれていったんです。」
その結果、既存の無償ボランティア事業と並行してワンコイン事業を進めようと、地域全員が意識を共有できました。
「話し合いを持たないまま有償ボランティア活動を始めては、既存の無償ボランティア機能がどんどん低下して大事な地域資源を失ってしまいます。ボランティアセンターで受けられるニーズは、ボランティアセンターで対応してもらう。できないことは、まちのよろず屋で受ける。そうすることでボランティアセンターも活性化し、いい関係が実現しています。」
将来的には、まちのよろず屋はなくていいと田村さんは言います。
「ワンコインは、地域の知らない人同士がつながるきっかけに過ぎません。つながりができれば、ワンコインがなくても手伝える関係ができるはず。実際にこの1年で、よろず屋を通してつながった人たちが助け合う事例も生まれています。」
「地域の若い人は、近隣同士が自然と助け合える時代があったことを知らない。まだそんな頃を懐かしがることができる人たちがいる今、もう一度地域のつながりを実現するべき。そのタイミングは今しかない。」
まちのよろず屋事業に共鳴した人の、この言葉が印象深いと話す田村さん。あの頃の地域の姿に戻る日を夢見ながら、少しずつまちが変わろうとしていることも実感しています。

 

新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴う外出自粛時にも、十分な感染予防対策を施したうえで、高齢者を中心にサポートを続けました

新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴う外出自粛時にも、十分な感染予防対策を施したうえで、高齢者を中心にサポートを続けました

 

目指すのは、学校のようなまち

 

例えば、小中学生の母親たちがスタッフの中心になった「まちcafeなごみ」のように、様々な地域活動の場に若い協力者が生まれています。
「私にもできることはないか、育ってきた地域に恩返しがしたい、近隣の人とのつながりの無さが気になっている、そんな若い人たちの想いが形になり始めているのが、この地域の一番いい変化だと思っています。活動したいと思っている人は、どう地域に入ればいいのかわからなかったり、機会を見つけられないだけなんです。」
「地域への入り方やつなぎ方を知っている人の存在が、これからの地域づくりのキーになる」と田村さん。上手に地域に入っていくためには、自分から地域を知ろうとする姿勢が一番大切だと言います。
「自分を主張するばかりではなく、その考えが地域のニーズとして求められているのか、まず調べること。その重要性を鳴尾東の活動で学びました。地域を知ることで、課題に対して取り組むべきことと取り組む順番が整理され、みんなの目指す方向が一つになります。すると適切な役割分担ができるので、物事の進むスピードが一気に速まるんです。地域をNPO法人なごみのカラーに染めようとすると、絶対に失敗します。大きく広げた粘土で色の異なる小さな粘土を巻き込み、ゆっくりこねると全体の色が変わるように、大きな地域に小さなNPO法人なごみが巻き込まれることで、内側から地域の色を染め変える。地域づくりってそういうものだと思っています。」
こうして地域本来の機能が少しずつ回り始めた鳴尾東地域全体を、学校のようなまちにしたいと田村さんは言います。
「地域の中で子どもをどう育てていくか。一般的には、これが地域がひとつになるための大きなテーマのひとつだと思います。でも本当に必要なのは、子どもだけじゃなく大人も一緒に育つこと。そのためにどうしていくのかを、みんなで考えることが地域活動です。地域の子どもと大人が互いに学び合う姿勢が実現した時、地域全体が大きな学校になります。それこそが、まちづくりだと私は思っているんです。」
学生時代、子どもたちへの社会教育をめざした地域づくりは、時と経験とみんなの想いによって熟成され、ひと回り大きな夢となって田村さんの背中を押し続けています。

 

住民同士の​つながり・交流をコンセプトに親子で楽しめる「鳴尾ふぁみり~マルシェ」を開催

住民同士の​つながり・交流をコンセプトに親子で楽しめる「鳴尾ふぁみり~マルシェ」を開催

 

 

POWER WORD

考えは言葉となり、言葉は行動となり、行動は習慣となり、習慣は人格となり、人格は運命となる

「まずは自分で考える。それを言葉にして行動に移すことで、仲間ができていく。そのつながりの先で事業が生まれるんだ。」
最初のNPOを立ち上げた時、恩師に言われた言葉がスッと自分の中に入ってきたんです。みんなそれぞれ考えていることがある。それを言葉に出し合うことでいいものを導き出し、ひとつにしていくこと。基本的なことですが、地域にとって重要なことだと思っています。

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