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上郡町赤松地区が誇る歴史・文化資源を活用し、
手づくり鎧(よろい)かぶとで武者行列!
日頃の地域づくり活動を防災につなげる
古正好晴さんの“信頼”

すごいすと
2021/01/12
古正好晴さん
(74)
兵庫県上郡町
赤松地区村づくり推進委員会

個人紹介

古正好晴(ふるまさよしはる)74才。昭和21年、上郡町生まれ。高校を卒業後、上郡町役場に勤務。定年退職後の平成24年、出身地の岩木自治会長として地域活動への取組がスタート。平成25年には赤松連合自治会長に推薦されると同時に、役場勤務時代の豊富な経験を求められ赤松地区村づくり推進委員会の2代目会長に就任した。どんなことでも「まずは自分でやってみる」ことがモットー。鎧かぶとづくりも、製図からデザインの考案、写真撮影、テキスト制作まですべて自らの手で行う。「鎧かぶとづくりの工房に行こうと思うだけで、元気が出る」と語るほど、有志たちと一緒に誠心誠意、活動に向き合い、赤松地区の顔とも呼べる事業の一つに育て上げている。

 

「おばちゃん、お祭りへ行こう!」
ふるさとを元気にすることも、災害からみんなを守ることも、赤松地区ではこんな呼びかけから始まります。
上郡町の中でも特に高齢化が進むこの地域を元気にするために、大切にしているのは隣近所が声をかけ合うことです。「隣の家の縁側で、一日中でも世間話ができるような付き合いを心がけたい」と言う古正好晴さん。声をかけるだけでなく、かけてもらえる関係づくりは、防災にもつながるからです。「あの人が逃げようと言うなら、一緒に行こう」と思える信頼関係を築くことが、地域づくりにも防災にも最も必要だと話す古正さんに、赤松地区での取組についてうかがいました。

 

赤松地区の史実に残る歴史資源を、ふるさとづくりに活かそう

 

「史実に残る偉人の生家を、地域づくりの拠点にしよう。」

日本の近代化に貢献した地元出身の政治家・大鳥圭介(*)の生家の取り壊しが検討されたことをきっかけに、歴史を身近に感じる地域にしたいと、平成20年に赤松地区村づくり推進委員会を設立。生家は建て替えにより「いきいき交流ふるさと館(以下、ふるさと館)」に生まれ変わり、ここを活動拠点に地域住民が中心となって新たな地域づくりに取り組んでいます。月2回の「ふれあい喫茶」や大鳥圭介の生涯を学べる「圭介塾」をはじめ、アマゴのつかみ取りといった地域資源を活かしたイベント、約800人の来場者が集まる「圭介まつり」などを開催しています。
また、赤松地区のもうひとつの地域資源に白旗城跡(*)があります。難攻不落の城という史実を活かし、平成28年から「落ちない城・白旗城」のPRプロジェクトとして「赤松合格祈願絵馬」を制作販売。絵馬掛所のある白旗山山頂への登山口に絵馬の自動販売機を設置すると、遠方からも人が訪れるようになりました。
「『合格しました』と書かれた絵馬が、山上に掛けられているのを目にした時はうれしかったです。」と古正さんの声も弾みます。

そんな白旗城跡の代表的な催しが、毎年11月23日に開催される白旗城まつりです。手づくりの鎧かぶとを身に着けた3歳から70歳代まで、総勢170人もの人々が練り歩く武者行列を一目見ようと、約4,000人が足を運びます。3~4年前までは、来場者1,500人ほどだったという白旗城まつりの転機になったのは、赤松地区の地域づくり事業として始めた鎧かぶとづくりでした。

 

*大鳥圭介:天保3年(1832年)~明治44年(1911年)。現在の上郡町岩木出身。明治新政府に出仕し日本の殖産興業に尽力するなど、日本の近代化に大きな足跡を残した。

 

*白旗城跡(しらはたじょうあと):建武3年(1336年)に赤松円心が白旗山上に築いた山城跡。足利尊氏を追撃する新田義貞軍の攻撃から50日以上城を守ったことから「難攻不落・落ちない城」として知られる。平成8年、国史跡に指定された。

 

合格者からのメッセージが書かれた「赤松合格祈願絵馬」

合格者からのメッセージが書かれた「赤松合格祈願絵馬」

 

「圭介まつり」でアマゴのつかみ取りを楽しむ来場者

「圭介まつり」でアマゴのつかみ取りを楽しむ来場者

白旗城まつりの武者行列

白旗城まつりの武者行列

 

手づくりの鎧かぶとで、もっと地域を元気づけたい!

 

「白旗城まつりに鎧かぶとを身につけた武士が登場すると、まつりが盛り上がるのではないか」との声を受け、平成23年に島根県安来市から「鎧かぶと保存会」の指導者を招き、「鎧かぶと手づくり教室」を開催。完成させた鎧かぶとを、その年の白旗城まつりで披露したところ話題になり、翌年から公民館事業として手づくり鎧かぶと教室が始まりました。平成26年には「赤松手づくり鎧かぶとの会」を結成。幼稚園跡を活動拠点「手づくりよろい工房(以下、よろい工房)」とし、古正さんを中心とする約10人の有志が、鎧かぶとの製作や手づくり教室での指導、鎧かぶとの着付けなどを通じ普及活動に取り組んでいます。これまでにつくった鎧かぶとは200領を数え、ふるさと納税の返礼品にも登録されています。

「赤松手づくり鎧かぶとの特徴は、紙製で軽量なこと。古布や革などもあしらい、本物の鎧かぶとと見分けがつかないほど本格的な仕上がりです。」と古正さん。型紙に合わせて裁断した厚さ2ミリの厚紙を、ボンドで貼り付け。さらしを張り、ニスで複数回塗り固めた上からペンキで色を付けます。いくつもの穴を開け、平紐を通して丁寧に縫い合わせ、約半年かけて仕上げます。
こうした鎧かぶとづくりが、それまで交流のなかった人々と交わるきっかけになりました。赤穂義士祭や相生ペーロン祭、姫路市夢前町の置塩城まつり、神戸まつりなどで赤松地区の有志たちが練り歩き、一方白旗城まつりの武者行列には他地域の人たちが参加します。様々なイベントで鎧かぶとの着付け体験を依頼され、映画の衣装としても鎧かぶとが使用されました。貸し出した鎧かぶとを身につけた美術展の警備員がSNSで拡散され、話題になったこともありました。

「武者行列での交流が増えるほど白旗城まつりが盛り上がり、何千人もの人が来ることで自分たちの地域に誇りを持てます。白旗城まつりに協力したいという思いが生まれ、みんなの気持ちが一つになるんです。」と古正さんは言います。
こうした手づくり鎧かぶとの広がりとともに、地域づくりとして住民たちが熱心に取り組む白旗城まつりを、新たな地域活動として活かすことになりました。

 

製作された鎧かぶと、随所にこだわりがつまっている

製作された鎧かぶと、随所にこだわりがつまっている

 

鎧かぶとの製作の様子

鎧かぶとの製作の様子

 

高齢者も参加できる防災訓練、かけ合う言葉は「お祭りへ行こう!」

 

平成29年、公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構の「地域コミュニティの防災力向上に関する研究会」からの提案を受け、超高齢社会における自主防災のモデル事業に取り組むことになりました。平成30年4月には赤松地区自主防災組織連合会を結成。日頃の地域づくり活動が、災害時に自然と助け合える防災につながるという理念のもと、「みんなが助かるむら・赤松」を目指し、防災活動への取組が始まりました。
「例えば親しい人から、『村祭りの獅子舞を見に行こう』と声をかけられたら、『行こう』と返事をして出かけます。このように、日常生活の中で気軽に声をかけたり、かけられたりするお付き合いをしていることが、いざという時の防災につながるという考え方です。」と古正さん。

話し合いの結果、赤松地区ではすべての自治会が熱心に取り組む白旗城まつりに着目。平成30年11月23日に開催された「第25回 白旗城まつり」を、防災訓練に活用しました。祭りへの参加の呼びかけが避難時の声かけになり、会場への送迎支援が避難訓練に、参加者へのもてなしは避難所での炊き出しにあたるなど、祭りに参加すること自体が防災訓練になると考えたのです。
当日、「祭りに行こう」と地域で声をかけ合った結果、地域住民の半数以上が祭りに参加。数キロメートル離れた場所に住み、祭りに参加できなくなっていた高齢者などから『誘ってもらってうれしかった』『久しぶりに参加できて元気が出た』『自分がこんなに歩けると思わなかった』といった声が多数寄せられました。

「災害時に備えて住民の間に声をかけ合える意識を育てるためには、『防災訓練をしよう』と言うより、『白旗城まつりに参加しよう』と伝える方が多くの人に届くことがわかりました。」
今年は新型コロナウイルス感染拡大防止対策のため、白旗城まつりも中止せざるを得なかった中、いろいろなことを見直すきっかけになったと古正さんは言います。
「白旗城まつりや鎧かぶとづくりなど、常に前を向いて進んできました。ここで一度、立ち止まる時間ができたと思えばいい。防災訓練の成果の中から、次の祭りにも活かせることが見つかるはずです。『一緒に行こう』『早めに移動しよう』と誘われた時、『あの人が言うなら一緒に行こう』と思えるような信頼関係を築くことが、最大の防災。人と人とのつながりやコミュニケーションを大切にした防災計画の立案は、まさに地域づくりそのものです。」

 

「第25回 白旗城まつり」を防災訓練に活用会場には高齢者等への優先座席が設けられた

「第25回 白旗城まつり」を防災訓練に活用
会場には高齢者等への優先座席が設けられた

 

バス乗降場所に集まる住民たち、会場への送迎支援が避難訓練となった

バス乗降場所に集まる住民たち、会場への送迎支援が避難訓練となった

 

集まれば、人はつながれる! 地域がひとつになる場づくりを目指して

 

「数年前、豪雨により堤防が決壊して集落が浸水し、膝まで水につかりながら小学校まで歩いて避難したことがありました。その時、近隣との付き合いのなかった人が、『うちには誰も来てくれなかった』と言ったんです。そういう声が二度と出ない地域にしたい。近所の人同士が普段から声をかけ合える関係になくては、地域が地域でなくなってしまいます。」と古正さん。赤松地区をそんな地域にするために、コミュニケーションの場をつくる重要性を感じていると言います。

「私たちが鎧かぶとづくりに取り組むのも、他地域との交流を深め白旗城まつりを活気づけたいのも、すべては赤松地区を元気づけ、地域のみんなを元気にするためです。ふるさと館やよろい工房ができるまでは、地域住民が集まる機会も、つながりが生まれるきっかけもありませんでした。今では声をかけると地域のみんながすぐに集まり、率先して周辺の剪定や草刈り、落ち葉の掃除、植栽の手入れなどをしてくれます。地域の一員として活動に関わることを求めている人が、こんなにたくさんいたのだと気づきました。絵馬や鎧かぶとを作って広めることが目的ではなく、この場所を拠点としていろいろな人が集まってくるきっかけをつくっているんです。」
集まる場があることで、みんなの気持ちがひとつになっていくことを古正さんは実感しています。

「「私が手づくりよろい工房に出かける時は、家内もついてきて鎧かぶとづくりを手伝ってくれます。このように、活動に生きがいを感じていることが身近な人に伝わり、その人がまた新たな友だちと一緒に工房へやって来る。そんな繰り返しが、大きな広がりになっていくと思うんです。ふるさと館やよろい工房のように、いつでも、誰でも集まれる場所をつくることが、これからの地域づくりの重要な要素になると思っています。」
地域内にもっと多くの交流を生み出し、人と人とのつながりがもっと密になる活動を、日々考えていると話す古正さん。
「ふるさと館やよろい工房を、人がつながっていく場所として大事にしたい。そのためにはまず、向こう三軒両隣のつながりを、地域みんなで育てていきたいと思っています。」

 

上郡幼稚園児が鎧かぶとの着付けを体験

上郡幼稚園児が鎧かぶとの着付けを体験

 

赤穂義士祭へ参加

赤穂義士祭へ参加

 

 

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人に感謝し、信頼される人に

40年間の役場勤務を通じて、地域に関われた喜びは大きいものです。住民のみなさんに育てていただき、今の自分があると感謝しています。そんな想いから、任された自治会長の役目も一生懸命果たすことで、たとえ少しでもお返しができたらと思っているんです。
地域づくりは、みんなが「その気」になることが大切です。その気になっていただくためには、まず自分が労を惜しまず率先して動き、物事に取り組むこと。人に対しても物事に対しても、誠実にまじめに取り組む姿勢が一番大切です。自分自身の行動や振る舞いに責任を持って誠意を尽くせば、応援してくれる人がたくさん出て来てくださいます。その結果、どんな事業も実になっていくのだと思うのです。

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