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まちの資源を、眠らせるな!

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2024/03/04
清水大介さん
(46)
兵庫県神戸市
株式会社フロッグハウス

個人紹介

清水大介(しみずだいすけ)46歳。1977年、明石市生まれ。会社員時代、ダブルワークで取り組んだ網戸の施工・販売をきっかけに、リノベーション事業をスタート。2011年、株式会社フロッグハウスを起業。団地や賃貸物件、古民家、空き店舗など、リノベーションによる設計・施工、再生を中心に取り組んでいる。一般社団法人リノベーション協議会主催「Renovation of the year」では2021年より3年連続受賞中。

独立から2年後、取引先が倒産した。「貯金もできたし、まあいいか。」と8か月間、アジアを中心に海外を放浪。外から日本を眺めてみると「当たり前だと思っていたことが、当たり前じゃなかった。」と気が付いた。それは今、評価される発想力に活きている。「楽しみしかない」と語るリノベーションとまちの関係を、清水さんが語る。

「貼り替えだけじゃ、誰も幸せになれない」

「ビジネスとしての可能性があると思っているからです。事業に取り組み続けることが、結果としてまちのためになればいい。」

リノベーションを手がける理由を尋ねると、清水さんはきっぱりと言い切った。経済活動とまちづくり。両者のバランスを大切にしながら、日々仕事に励んでいる。

自分の手でビジネスを始めたいと思っていた。中学卒業後、職人の世界へ飛び込み、高所工事などで足場を組む“とび職”に。19歳で独立を果たすも、2年後に元請会社が倒産。「会社員を経験してみたい。」と企業に就職したが、「自分で仕事を生み出すほうが性に合っている」と、副業としてインターネットで網戸を販売したり、賃貸物件の原状回復工事(*)を請け負うようになった。

仕事の依頼も順調に入り、楽しく働いていた清水さんだったが、徐々に物足りなさを感じ始めた。

「オーナーは、新しい入居者に入って欲しくて工事を依頼します。でも、築30年ほどの物件になると、床やクロスを貼り替えるだけのリフォームでは、入居したいと思ってくれる人はほとんどいません。」 

誰も幸せじゃない――。入居者を探すオーナーの苦労を、目の当たりにし続けた清水さん。現場仕事で培った視点を活かし、提案を始めた。

*現状回復工事:マンションなどの入居者が退去した後、部屋のクロスや床の貼り替え、キッチンや洗面台の置き替えといったリフォームで、部屋を新しい状態に戻す工事

入居者が決まらなかったマンションの6部屋を、リノベーションで人気の住空間に変えた

かつて暮らした団地から始まった再生事業

「例えば、『クロスの貼り替えではなく、壁をDIY可能なフリーウォールに作り替えませんか』というように、新しい使い方を提案するようになりました。」

オーナーに寄り添った仕事ぶりが、少しずつ成果となって現れ始めた2011年、清水さんは会社を退職し工務店として起業することを決心。

世の中のニーズを感じ取り、ダブルワーク時代から大切にしてきた「眠っている資源を活かす」という考えのもと、団地や古民家、空き店舗への営業活動に取り組み始めた。

ある時、子どもの頃に暮らしていた明石市の団地で、空き部屋を購入する機会が訪れた。リノベーションを行い、施工事例として見学者に開放すると、団地の住人や不動産会社から依頼が舞い込むようになった。

こうして軌道に乗り始めた2015年、建築士である笹倉みなみさんが社員として加わった。

「清水がリノベーションを手がけた、播磨町の団地の住人だったんです。パースや図面を描くお手伝いをするうちに、入社しないかと声をかけられました。職人でありながら、斬新な発想や提案もできる人としての面白さや、設計担当者も現場に出られる楽しさに惹かれました。」と笹倉さん。設計から施工管理まで手掛ける事務所として、仕事の幅も広がっていった。

高齢化・人口減少が進む団地のファミリー向けの一室が……
リノベーションによりシングルを対象にした住居に変身! 若い世帯の入居が実現した

住み継ぎ、住み続けるためのリノベーションへ

そんな中、リノベーションの新たなあり方に出会えた仕事があった。神戸市にある団地の、リノベーション事業のプロポーザル(*)だった。

「これまで団地のリノベーションといえば、低予算のユニークな提案が優先事項として求められていました。しかし、断熱や換気、さらに配管なども整え、生活の質も重視した施工を提案することで、団地も部屋も住み継いだり、住み続けたりできることを伝えたいと思ったんです。」

「株式会社フロッグハウスとしての、集大成をギュッと詰め込んだ」という提案は無事に採用され、しっかりと手ごたえをつかんだ清水さん。老朽化が目立ち、家財であふれる団地の空き部屋を、次の世代にどう引き継ぐのか。住人亡き後、どう処分するのか。この地域課題に対し、「住み継ぐ」「住み続ける」という視点が、リノベーションによって生まれることを実感した。

「新しくなった部屋に、若い家族や子どもが来ることで、団地暮らしも楽しいと思ってもらえるようになること。それも、リノベーションの持つ力であってほしい。」

こうしたリノベーションを通じ、眠っていた建物が地域の中で再稼働を始めたとき、そこに「新しい風」が起こると清水さんは言う。

*プロポーザル:業務を委託する上で、最も適した提案者を選定する方式

壁をお絵かきボードに!子どもたちが楽しく暮らせるアイデア満載
団地の中の集会所がイベントスペースとして息を吹き返した

生まれ変わった建物から、地域をにぎわす風が吹く

創業時、清水さんは「眠っている資源を再生して、地域に新しい風を起こす」という経営理念を掲げた。

「物件が使われ始めると、こちらが考えていた以上のことが起こる場合があります。そんな新たな出来事が始まる瞬間を“新しい風”と呼んでいます。」

例えば、ある公共施設では、今まで足を運ぶことのなかった高校生が、宿題をするために訪れるようになった。また、改修で生まれた国際交流シェアハウスでは、広いオープンキッチンを設置したことで、こども食堂を始める人が現れた。それまで、外国人に近寄りがたさを感じていた近所の人たちが、こども食堂に足を運ぶようになり、外国人とコミュニケーションが取れるようになった。今では、外国人が料理教室を開催するなど、地域交流が生まれ始めているという。

建物が新しくなると、人の流れも新しくなる。生まれる出会いは、新たな何かを引き起こす。いろいろな人を巻き込みながら、清水さんの手がける建物は、どんな風を吹かせるのだろう。

リノベーションという言葉も知らないまま、かなえたい想いだけでスタートして10余年。想いがそのまま体現されている今を、清水さんはこう言って笑った。

「楽しさしかありません。」

国際交流シェアハウスのオープンキッチンで開催された子ども食堂
次世代へ住み継いでいける住環境を模索し続ける

POWER WORD

道徳無き経済は罪悪 経済無き道徳は寝言

「常に頭に置いておくべきだと思っている」と清水さんが言う、二宮尊徳の言葉。一生懸命、経済を回すために、世の中に求められるニーズを探ること。一生懸命、人やまちを喜ばせること。事業家として大切にしたい姿勢について清水さんが語る。

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内橋麻衣子