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誰もひとりぼっちにしたくない!
まちなかに開いたみんなのリビングで、
“地域家族”という絆を生み出す中村保佑さんの物語。

すごいすと
2020/08/15
中村保佑さん
(75)
兵庫県神戸市
東灘こどもカフェ

個人紹介

中村保佑(なかむらほゆう)75才。昭和19年、北京生まれ。広告代理店を経て食のプランニング会社に勤務。20年間の東京での単身赴任生活中に、調理師免許を取得。高校生に豚汁の昼食をふるまったり、神楽坂のまちあるきを楽しむといった地域活動を経験。定年を機に神戸市へ帰郷後、地元の地域活動などで知り合った仲間と共に自分たちの居場所をつくろうと、平成23年4月「東灘こどもカフェ」を立ち上げた。平成30年、内閣府「子供と家族・若者応援団表彰」、ひょうご県民ボランタリー活動賞を受賞。週に一度はテニスで汗を流し、東灘こどもカフェのおせち料理づくりでは手づくりの焼豚をふるまうなど、“居場所”を通じて地域活動を謳歌する日々を過ごしている。

 

「おにぎりセット、まだあります?」「バザーの商品が雨に濡れるよ」
商店街を通りすがる人たちが、次々に顔を出していきます。一年363日、たくさんの人を温かい笑顔で出迎え続ける中村保佑さん。講座のチラシや子どもたちが描いた手づくりポスター、美しい絵手紙が所狭しと壁を埋め、小物や日用品が行儀よく棚に並んだその部屋は、おばあちゃんの家の居間を思わせるほっこりとした空間です。この「こもれど(木洩童)」と名付けられたみんなの居場所を運営するのは、中村さんが代表を務める「東灘こどもカフェ」。中村さんが「発見と刺激にあふれた中身の濃い毎日を、自宅時間の余分に生きられる場所」と表現する活動拠点「こもれど」とは、いったいどんなところなのか? 中村さんに語っていただきました。

 

11人の居場所が、1万人のお茶の間になった!

 

「20 年ぶりに戻った我が家に、私の居場所はありませんでした。1 週間前にやってきた犬が、私の部屋を占拠して いたんです。」と笑う中村さん。
まずは自分が楽しむための居場所をつくろうと活動を始め、60 歳で取得した調理師免許を活かし料理教室を開催するなど、地域活動を通じて出会った11 人の仲間と共に「東灘こどもカフェ」を 立ち上げました。

「食育活動を通じて、子どもたちの夢をサポートしようと思っていました。
でも、習い事や遊びで忙しい子どもたちに代わって集まってきたのは、
“ 昔の子ども” だった高齢者のみなさんでした。」

そして中村さんは、想像していた以上に一人ぼっちの人が地域に多いことに気づきました。
夫に先立たれた女性や独身男性をはじめ、パートナーが高齢者施設に入居して一人になった、家族で過ごす時間を持てず家庭に居場所を見つけられないといった人たちでした。
地域の中に居場所があることの大切さを改めて感じた中村さん。誰もが参加しやすい環境づくりを、何よりも大切にしながら活動を続けてきました。

「誰でもいつでも、無理なく参加できる場所、それが東灘こどもカフェの活動拠点であるみんなの居場所『こもれど』です。
決め事や役割を設けず、来たい時や手が空いた時、参加したい人や手伝いたい人がちょっと立ち寄って、パソコンの入力作業をしてくれたり、お弁当の配達を手伝ってくれたり、毎日開いているバザーの店番をしてくれたりしています。
こもれどのオープン日は、一年363日。当番も決めずに運営していますので、他に人がいない時はすべて私が訪問者の対応をします。
まるで、子どもを10人抱えた母親のような忙しさです(笑)。」

「ちょっと、しんどいねん。」
そう言ってふらりと立ち寄る人には、身上を尋ねることなく聞き役に徹します。「ただ雑談を楽しまれることで、すっきりして帰っていかれます。」
こうしたつながりの緩やかさや気楽さから、認知症が疑われる人や生きづらさを抱え行き場を無くした若者など、悲喜こもごもの人生を抱えた人々も訪れるようになった「こもれど」。
今では、年間1万人以上が利用するお茶の間として存在しています。

 

子どもたちとのお菓子づくり

子どもたちとのお菓子づくり

 

平成27年12月に行われた「こどもクリスマス会」

平成27年12月に行われた「こどもクリスマス会」

 

居場所づくりとは、一人ひとりの役割づくり

 

「どこか就職先はないだろうか…」「糖尿病で気を付けることは…」
お弁当やお茶をいただきながら、お互いに相談にのったり、情報を交換し合う「みんなの居場所」を活動のベースに、親子で立ち寄れるコミュニティスペース「ほっとステーション」、
困りごとを手伝う有償ボランティア「一般社団法人東灘なんでもお手伝いセンター(*)」や、女性による生活介護サービス「若葉サービス」、さらに手づくり弁当の昼食を高齢者や子どもたちに提供している「あたふたクッキング」、淡路島へ移住した仲間がまちとの交流のために開いた活動拠点「こもれど淡路」など、812人(令和2年8月現在)の会員を中心に、多世代交流の場を展開している東灘こどもカフェ。

新型コロナウイルス対策においても、積極的に取組に着手。
地域の高齢者や障害者への弁当の配達や、電話で話し相手を務める「10分間触れ合いコール」の開設、大学ボランティア団体との連携により、休校中の子どもたちの学習支援、お菓子の無料提供なども行ってきました。

「東灘こどもカフェでは、どんな相談や提案も断らないのがルールです。依頼を引き受けると『私ができます』と会員さんたちの中から声が上がります。ここは誰でも力を発揮できる場所なんです。」

例えば、77才から絵手紙を描き始めた男性は、周囲の人たちの希望に応え絵手紙教室を開き、88才の現在も継続中。カメラを提げて遊びに来た人がカメラ教室の開催を頼まれたり、洋裁が得意な80才の人はマスクづくりの先生になりました。84才の料理の先生は、おいしいてんぷらの揚げ方を教えています。

「こうした地域活動は、まず自分が楽しむことが大切。参加して楽しむ、役に立って楽しむ。最初から考えて取り組むのではなく、楽しいと思えることを提案したり引き受けたりしながら、自分たちで切り開いていく楽しさを大切にしています。」

頼まれごとを断らないこと、誰かに依頼することは、その人の役割をつくることだと話す中村さん。
「それがすなわち、居場所をつくるということです。子どもたちにも、お手伝いをするたびにスタンプが溜まるカードを用意して、楽しみながら役割を果たしてもらっています。東灘こどもカフェは、地域の困りごとを解決していく居場所でもあります。その解決方法の一つが、みんなが自分の持てる力を発揮することなんです。」
こうした活動の充実とともに中村さんの想いも広がり、地域にも少しずつ変化が生まれていきました。

 

*一般社団法人東灘なんでもお手伝いセンター:平成27年7月設立。東灘こどもカフェで約5年間活動していた「何でもお手伝いチーム」が一般社団法人化。

 

新型コロナウイルス対策として、大学ボランティア団体と連携して、休校中の子どもたちへの学習支援やお菓子の無料提供などを行っている

新型コロナウイルス対策として、大学ボランティア団体と連携して、休校中の子どもたちへの学習支援やお菓子の無料提供などを行っている

 

新型コロナウィルス対策として、子どもたちがお手伝いなどをしてスタンプをためる、「こどもスタンプカード」も実施

新型コロナウィルス対策として、子どもたちがお手伝いなどをしてスタンプをためる、「こどもスタンプカード」も実施

 

地域がひとつの家族になる、それが絆を結ぶ意味

 

東灘こどもカフェの活動を始めてまもなくの頃、ひとりぼっちの人の多さと共に、中村さんが気付いたもうひとつの地域課題。それは、阪神・淡路大震災から15年が経ち、挨拶を交わし合うことも少なくなった地域の姿でした。

「絆を結び直すには何をすればいいんだろうと、ずっと模索しながら続けてきた活動が、徐々に人と人を結び合わせてくれたように感じます。10年が過ぎた今では行き交う人が挨拶を交わし合い、地域が少しは家族のようになってきたと思います」と中村さん。

「こもれどに集まる人たちが、互いに気心の知れた関係になったり、子どもたちを孫のようにかわいがったり。人と人とのつながりが、地域の中に生まれ始めたと感じるんです。絆とは、神経細胞のようにつながり拡がっていくものだと思っています。会員さんの紹介で新しい人が来る、そしてさらにその友だちがつながっていく。そんな繰り返しの結果、虫捕り網の目のように人の繋がりの目が増えていけば、一つひとつが小さく詰まった目になります。そんな密度の濃い絆が地域に拡がることで、万一の緊急事態にも誰かが気付き対応できます。それが絆づくりだと思うんです。地域力とは、住民同士が知り合うこと。どれぐらい小さい網目で友だち関係を構築できるか。それが地域の安全を守る力にもつながっていくのだと思っています。」

自分たちが楽しむ場所づくりが、10年の歳月を経て東灘地域をつなぐみんなの居場所に育ちました。そんな地域活動の中で、中村さんには大切にしていることがあります。

 

「ほっとステーション」で行われている絵本の読みきかせ

「ほっとステーション」で行われている絵本の読みきかせ

 

「あたふたクッキング」では、手づくり弁当の昼食を高齢者などに提供

「あたふたクッキング」では、手づくり弁当の昼食を高齢者などに提供

 

家族のように誰もが集う「まちなかリビング」

 

東灘こどもカフェの10年間は、チャレンジの連続だったと言う中村さん。

「ここでの活動は、いつもライブ。こもれどの部屋も、常に模様替えをしながら運営しています。新しい講座やイベントをどんどん企画して壁のチラシも貼り変えます。」

「こんな講座が始まったの?」「新しいメニューができたのね」訪れる人たちにとって目新しい情報があればこそ、活動も継続できると中村さんは言います。

「フレキシブルに時代に合わせ、ドラマチックな変化を起こさなければ、地域活動は続きません。活動を継続するためには、何でもやってみることが大切です。どんどん変わっていけばいいんです。うまくいかなければ、うまくいくように努力すればいい。人生と同じで、どんなことでもやってみなければわかりませんから。」 そしてもう一つ、中村さんが守り続けているもの。
それは、こもれどの場が持つ雑然とした空気感だと言います。

「こもれどでは、どこにいても集まってきた人同士の動きが見え、にぎやかな話し声が聞こえます。
足を踏み入れた瞬間、人と人との触れ合いを肌で感じる場であることを大切にしているんです。その場の気配や集まっている人々の気が、家族が集う居間にいるように伝わることがおもてなし。それを感じさせない無機質な場所は、地域の居場所としての役割を果たしません。地域家族のための『まちなかリビング』で次々に新たなチャレンジを続けているグループ、それが東灘こどもカフェなんです。」

 

甲南大学の学生がボランティアとして参加

甲南大学の学生がボランティアとして参加

 

令和2年5月に行われた定例会

令和2年5月に行われた定例会

 

 

POWER WORD

人生は恩送り

「小学1年生で出会った子どもが高校生になり、TOEICで980点を取るまでになりました。すると、英語を教わる立場から子どもたちに英語を教える側に回ってくれたんです。活動の10年の歩みが子どもの成長という形になって、地域へのお返しにつながりました。」
こうしたつながりを「恩送り」と呼ぶ中村さん。これこそが絆づくりだと言います。
「自分にできることを人々に還元することが地域の財産になり、いずれまた地域活動として巡ってくる。それが恩送りだと思っています。保佑とは『for you』、助けるという意味です。みんなの恩送りのお手伝いをするために、付けてもらった名前のような気がしています。」

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