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世界人口を“おいしい”で満たす!
野菜農家に食べる人の顔が見える流通を。

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2022/06/20
竹下友里絵さん
(26)
兵庫県神戸市
タベモノガタリ株式会社

個人紹介

竹下友里絵(たけしたゆりえ)26歳。平成8年、神戸市生まれ。高校2年生でのカナダ留学をきっかけに、世界のフードロス問題に興味を持ち、関西学院大学総合政策学部で国際協力について2年間学んだ後、食料環境経済学を学ぶため神戸大学農学部へ3年次編入。事業化を経験するため1年間休学し、東京と関西のベンチャー企業へのインターンシップを経て、在学中の2019年2月にタベモノガタリ株式会社を起業。同年4月「八百屋のタケシタ」を開業し、有機野菜の販売に取り組む。2022年3月、有機野菜の収穫・農業体験事業「やさいハンター」を開始。食糧需要のアンバランスを解消し、世界中の誰もが「おいしい」で満たされる社会の実現を目指し、活動を続けている。
2021年2月、第59回関西財界セミナーにて関西財界セミナー賞2021「輝く女性賞」を受賞。同年6月、SDGs・エシカル消費実践事業「私たちの選択が未来を変える!第1回キックオフフォーラム」に登壇するなど多方面で活躍中。

「捨てるほど食べ物が豊富な国と、食べ物が不足して飢餓に苦しむ国。このアンバランスは、なぜ生まれるのだろう。」
疑問を抱いた竹下友里絵さんがたどり着いた一つの答えは、規格に基づく流通の仕組みでした。
「社会を変えたい!」という想いを形にするため、選んだ道はソーシャルビジネス(*)としての起業。規格外野菜(*)の廃棄によって起こるフードロス課題を解決するために、味やこだわりといった野菜が持つ本来の価値を、食べる人の顔が見える販売ルートで提供する仕組みづくりに取り組んでいます。
道に迷いながらも社会課題に立ち向かい続ける、起業家としての志をうかがいました。

*ソーシャルビジネス:自然環境、貧困などといった様々な社会課題に対して、持続可能な経済活動を通じて問題解決に取り組む事業のこと
*規格外野菜:大きさ・形・色などが市場で定められた規格から外れている野菜

どんな食べ物も、捨てないことが当たり前だと思っていた

高校時代に留学先のカナダで、竹下さんは衝撃的な光景を目にしました。ホストファミリーが、食べ残したたくさんの夕食を迷うことなくごみ箱に捨てていたのです。「一粒のお米も残さず食べなさい」と育てられてきた竹下さんにとって、この体験はフードロスに関心を持つきっかけになりました。
帰国した翌年、国際協力を学ぶため関西学院大学総合政策学部へ進学した竹下さん。「なぜ国際協力に興味があるの?」と尋ねられたことで、ホームステイ先での体験を思い出しました。
「世界には、食べきれずに捨ててしまうほどたくさんの食べ物がある一方で、食料不足で死んでいく人がいる。そんな食糧需給のアンバランスさに問題意識を感じていたことに、はっきりと気が付きました。」と言います。

食の流通や分配の知識を深めるために食料環境経済学を学ぼうと、3年生で神戸大学農学部に編入。フードロスについて調べ始める中で、農産物には規格が存在することを知りました。

「農業実習中に『いい農家とは、どんな農家だと思いますか?』と質問をされました。おいしくて安心・安全な野菜を作れる人だと思っていたら、先生の答えはきれいな形、つまり規格に適合した形の農作物を作れる農家だったんです。フードロスには、出たロスをどうするのかという課題と、そもそもロスを出さないためにはどうすればいいのかという課題があります。規格がある以上は規格外の作物が生まれ、それらは市場で流通されにくいためフードロスにつながります。より根本的な解決につながるのは、ロスを出さないようにするために流通の仕組みを変えることだと感じました。」
その後、竹下さんは大学を1年間休学。食材ロスの低減を目指し、急速冷凍機を販売している東京のベンチャー企業へ10か月、その後関西に戻り有機野菜の宅配会社へ2か月、それぞれインターンシップに参加しました。
「関西の企業では、ラオスでの事業の立ち上げに参加させてもらいました。事業づくりを一から見せていただいたことで起業のイメージが具体的にわき、私も起業しようと決めました。」
復学後、神戸市内で生産された規格外の果物を冷凍して販売する事業を、友人2人と開始。ビジネスプランコンテストにも挑戦し、ソーシャルビジネスに取り組むベンチャー企業に出資を行う株式会社ボーダレス・ジャパン(*)の企業賞を獲得。「孤立はさせない、でも独立はさせる」という同社の代表取締役社長である田口一成氏の思想に共感し、グループ会社として傘下に入り起業する決心をしたのです。
「食べられずに命を落とす人を無くしたい、社会を変えたいという私の志が、伝わったのかなと思っています。」と振り返ります。
その後、事業計画を練り直し、在学中だった2019年2月、竹下さんはタベモノガタリ株式会社を設立。「世界人口を“おいしい”で満たす」というミッションを掲げ、起業家として歩み始めました。

*株式会社ボーダレス・ジャパン:社会起業家を育て、ノウハウ・資金・関係資産を共有し、事業に集中できる環境を提供するソーシャルビジネスのプラットフォームカンパニー

農家への想いが育った神戸大学農学部での農業実習

インターンシップでラオスの事業立ち上げに参加

フードロス解消の第一歩は、有機野菜を売る八百屋!

会社設立の2か月後、竹下さんはフードロスの課題に挑む「八百屋のタケシタ」を開業しました。販売するのは、神戸市内の農家が作る地場産野菜。売場は、知人から紹介された神戸市営地下鉄西神・山手線の名谷(みょうだに)駅構内。紹介された農家へ足を運んでは想いに耳を傾け、自信を持って販売できる農作物を厳選。規格外野菜でも規格に当てはまる野菜と同様、適正価格による仕入れと販売にこだわりました。
「開業した当初、お客さんの第一声は『地場産野菜やのに高いな』だったんです。でも、農家から話を聞き畑にも通い、おいしさには自信がありました。」と竹下さん。地場産野菜の価値を伝えるために、大切にしたのはコミュニケーションでした。
「店頭では、お客さんに食べ方の提案をしていました。例えば、『焼くとおいしい』と農家で教わった小カブに、『焼くだけでごちそう!』というPOPを添え、一日で50~60袋も売っていたんです。」

一方、農家へは消費者の声を積極的に届け続けました。
「おいしいものをつくるために農業に携わっている人は、自分の作った野菜を誰が食べてくれているのか知りたいはずだと思ったんです。『小カブを焼いたら家族が喜んだ』『こんな食べ方もおいしかった』といったお客さんの言葉が、農家のモチベーションになっていました。」
安心な地場産野菜を求める主婦、健康への関心が高い高齢者、幼い子どもを育てる母親など、じわじわと固定客が増え、生産者との信頼関係も築かれて行った中、新型コロナウイルスが発生。2020年4月に緊急事態宣言が発令され、駅での販売が休業を余儀なくされると、すぐに移動販売をスタート。およそ3か月間、野菜を積み込んだ2トントラックを自ら運転し、ほぼ毎日のように神戸市内を回り続けました。自粛期間が明けると、駅での販売再開と同時に神戸市内のスーパーへ提携販売の企画を提案。市内6店舗に八百屋のタケシタの野菜コーナーを設けるなど、順調に事業を育てていきました。
さらに販路拡大を目指そうとした竹下さんでしたが、2021年8月頃からは、八百屋事業をこのまま続けていくことへの違和感を覚えるようになったのです。

地下鉄・名谷駅構内に開いた「八百屋のタケシタ」

コロナ禍、2トントラックで野菜の移動販売に取り組んだ竹下さん

本当に農家のためになる事業って、何だろう?

きっかけは、「野菜の出荷数を増やしませんか」と声をかけた農家から「一人で作れる量の限界だから、これ以上は出荷できない」という答えが返ってきたことでした。
「私がやっていることは、農家のためになっているんだろうか。」
農家からの率直な声を集めて回った結果、ほとんどの生産者の年収は300万円台にとどまり、決して豊かとはいえない現状を知りました。店舗数を増やしても農家の年収を伸ばすことにつながらない事業に、目指す未来は見えないと感じた竹下さん。八百屋事業からの撤退を決断したのです。
「規格外野菜を流通させるというテーマは、農家が100軒あれば100軒全てが抱えている課題。誰のための事業なのか、最後までわからなかったことが反省点でした。」
改めてプランニングに取り組んだ竹下さんは、都市近郊で有機野菜を生産する農家のために、事業を転換することを決めました。
「規格に基づいて取引が行われる今の市場では、生産物の約7割が規格外野菜になる有機農家は取り残されています。農協を経由して卸売市場へ送られる流通の仕組みに合わないんです。その流れに当てはまらないローカルな流通の仕組みづくりこそ、私にできることだと思いました。」

そしてたどりついたのが、有機野菜の収穫・農業体験「やさいハンター」です。都市近郊型の有機農家は、農業に触れる機会の少ない消費者との距離が近いうえ、多品目の野菜を少量ずつ作っている生産者が多く、一度の体験で何種類もの野菜を収穫することが可能。狭い土地で少量しか作れないというデメリットを、強みに変えたビジネスモデルが作れると考えたのです。
目標は、週末レジャーとして選ばれること。他の味覚狩りに負けないよう、収穫を「ミッション」としたゲーム仕立てにし、エンターテインメント性を持たせました。2022年3月のスタートからわずか3か月足らずで、リピートを希望されたり、「自分でとった野菜だからと、普段は野菜を嫌う子どもが一生懸命食べていました」という喜びの声が届いたり、手ごたえを感じていると言います。
この「やさいハンター」事業で目指すのは、農家の副収入づくりはもちろん、ファンを作って固定客に育て、直接購入につながる仕組みをつくることです。
「今までの農業は、売値が決まらないまま生産し、気候などの環境によって売上が変動するなど、農家にばかり負担がかかっていました。直接販売ができれば自分たちで値段を決められますし、お客さんの顔が見えることでやりがいも生まれます。北海道のように効率性が求められる大規模農家もあれば、神戸市のように都市近郊の狭い土地で、適量を生産して適量を消費する小さな農家があってもいいと思うんです。規模に応じた流通の多様化が必要だと思っています。」
力強く話す竹下さんですが、八百屋事業の撤退を決めた後、起業の継続を迷ったこともありました。

規格180g未満のズッキーニ。右3本は規格外とされる

畑で遊びながら野菜の収穫体験ができる「やさいハンター」

農家の志が食卓に並ぶ、ビジネスモデルを作りたい!

「竹下さん、何がしたいの?」
「やさいハンター」への事業転換を模索していた頃、多くの人に質問されたことで、自分でも進むべき方向がわからなくなっていたと言う竹下さん。そんな時、救いになったのが「やるべきことを、やりたいことにしたらいいんだよ」という田口社長の一言でした。
「私がやるべきことは、有機農家の力になること。それが『やさいハンター』事業だ。」と改めて確信。「志のある事業を、一人の夢のためではなく、社会みんなの夢のためにやろう」という田口社長の言葉が、支えになっていると話します。
「ソーシャルビジネスの難しさは、制約の多さです。例えばタケシタ屋では、規格外野菜は捨てられるものなので、無料で引き取って販売すれば売上を作ることはできます。しかし、農家の収入源にすることが最大の事業テーマなので、絶対に買い取らなくてはなりません。」

制約とは、今の社会をどうしたいのかという理想から生まれるものだと言う竹下さん。ソーシャルビジネスでの起業に必要なのは、理想を具体的に思い描ける志と、制約をクリアするためのビジネスモデルを知ること。この2つの軸を整えることだと話します。
「一番大切なことは、どうしようかと考えている暇があったら、とりあえず動くこと。私自身、次のステージへの道が開くきっかけは、すべて行動を起こしたことでした。収穫体験というアイデアにたどり着いたのも、農家へヒアリングに出向いたから見えてきたこと。机の前で考えていても思いつかなかったはずです。だから、もう頑張れないと思った時は農作業を手伝います。動いているうちに『あぁ、この農家のために頑張ろう』って、勝手にエネルギーが生まれてくるんです。」
動き続ける先に竹下さんが目指すのは、志を持って作り続ける農家の野菜が、流通市場から取り残されることなく、当たり前に食卓に並ぶ社会です。
「離農者が増え、新規就農者も定着しない。農業人口が減っていくうえに、気候変動も激しい。このままでは日本の野菜はなくなり、海外からの食材に依存した食事になるかもしれません。今が農業の仕組みを変える分岐点。その一助になりたいと思っています。」
「途中でやめることは、あきらめること。やりたいことがわかっているから、やるしかない。」
迷いのない声で言い切る竹下さん。
「自分のやりたいことをやる人生を、生きる人でありたい。そんな起業家になりたいんです。」

「やさいハンター」では、収穫を「ミッション」としたゲーム仕立てにし、エンターテインメント性を持たせている

自らも農作業に取り組む竹下さん

(文/内橋麻衣子 動画/三好幸一 )

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やりたいことは全部やる

留学も編入も、休学して東京へ行ったことも、神戸の街を2トントラックで走り続けたことも、「誰に言われたわけでもなく、全部自分がやりたいからやったこと。」と話す竹下さん。どんなに反対されても、やってみないと気が済まないという背景には、「なりたくない自分」がいるからだと言います。「まだまだやりたいことがある。」と笑う竹下さんが、挑戦を続ける理由とは?

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