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佐用町にワクワクするしごとを創る!
地域初のコワーキングからの挑戦

すごいすと
2022/11/25
谷口悠一さん
(44)
佐用町
コバコ株式会社

個人紹介

谷口悠一(たにぐちゆういち)44歳。昭和53年、佐用町生まれ。公認会計士、税理士。大学卒業後、自動車部品メーカー、佐用町役場、兵庫県西はりま天文台での勤務を通じて、地域の起業家支援を志すようになり大学院へ進学。税理士法人、監査法人で会計監査や起業家支援に携わった後、Uターン。平成29年11月、佐用町で「たにぐち税理士公認会計士事務所」を開業。佐用町を拠点とした起業家の伴走支援を目指し、空間デザイナーである弟の慎哉さんと共に同年12月、コバコ株式会社を設立。平成30年5月、泊まれるコワーキング「コバコWork&Camp」を開設した。

地方における人口減少を止めるきっかけになるのは、地域で働くことがもっと身近で自由なものになることではないか? 若い世代が就きたい仕事と、働き手を求める職種のミスマッチを実感し、目指すべき道を見つけた谷口悠一さん。自らもスタートアップの際に体験した、起業の不安や困難を共有しながら、地元で新しい仕事を創ろうとする人たちを支援しています。
「ローカルからワクワクするしごとを創ろう。」というミッションのもと、知恵や経験、情報を分かち合い、誰もがつながり合えるコワーキングスペースを通じ、チャレンジする人がはじめの一歩を踏み出す際のサポートに取り組む想いをお話しいただきました。

佐用町で仕事を創る人を応援したい!

「たくさんの回り道をしてきました。でも、すべての経験が事業に活きているので、今となってはよかったと思います。」と笑う谷口さん。大学卒業後、モーターレースのメカニックを目指し、自動車部品メーカーにエンジニアとして入社しました。2年後、その企業がレースから撤退したことをきっかけに、佐用町へUターンし、役場に就職。窓口での業務や兵庫県立西はりま天文台での仕事を通じ、地元の地域課題を目の当たりにしたのです。
「卒業後、地元に残りたいにもかかわらず、希望する就職先の不足から、町外へ出て行かざるを得ない高校生たちの多さに驚きました。例えば、令和2年は、就職した地元の高校生60人のうち、佐用町内で仕事に就いたのはわずか3人です。」
若い人たちが希望する仕事を地域に増やせるのは、起業家だと気付いた谷口さんは、起業家を支援する職業に就こうと、公認会計士を目指すことを決心。受験勉強のため役場を退職し、東京の大学院に進学。卒業後は、宍粟市の税理士法人で働きながら勉強を続け、1年後、公認会計士の資格を手にしました。その後、ベンチャー企業支援を数多く手掛ける大手監査法人へ転職。
上場企業の監査業務に取り組む一方、起業支援の経験を積み、地元での独立開業を目指すことを決めました。

監査法人の退職を控えたある日、帰省した佐用町の駅前に空き店舗を見つけました。その際、頭に浮かんだのは、平成21年8月に起こった兵庫県西・北部豪雨でした。水害の影響で、更に空き家や更地が増えていることに寂しさを感じたのです。
「駅前の空き店舗を、人が集まれる場所にしたら面白いのではないか。」
当時、一緒に起業準備に取り組んでいた仲間たちから提案されたのは、都市で増えていたコワーキングスペース。「佐用町で誰もやらないのなら、自分でやろう。」と、会計事務所の開業に加え、コワーキングスペースの開設も決心。平成29 年11月、地元に戻り、会計事務所を開業し、同年12 月にはコバコ株式会社を設立。クラウドファンディングにも挑戦し、約半年がかりで店舗を改装した平成30 年5月、泊まれるコワーキング「コバコWork & Camp(以下、コバコ)」をオープンさせました。
「準備は本当に大変でしたが、背中を押したのは、佐用町で仕事を創る人を応援したいという気持ちでした。クラウドファンディングに取り組んだのも、何かに挑戦する人の姿や、挑戦している人と仕事をする楽しさが、そのまま、まちの雰囲気になると思ったからです。」
こうして、谷口さんの「挑戦」が始まりました。

仲間たちと協力して空き店舗を改装
無料レンタサイクルも備えた現在の「コバコWork & Camp」

夢をかなえた起業家がコバコから羽ばたいてゆく

佐用町でコワーキングスペースの運営を軌道に乗せるのは、時間がかかるだろうと考えていた谷口さん。コワーキングスペースに宿泊を組み合わせることを思いつきました。それがコバコの一番の特徴、「泊まれるコワーキング」です。
宿泊スペースは、5人部屋が2つ。仕事で訪れる人をはじめ、各地から岡山県や鳥取県への移動途中に利用する人や海外からの旅行者、なかには、コバコで宿泊するためにわざわざ佐用町に立ち寄る人など、様々な利用者が訪れると言います。
特に谷口さんの印象に残っている利用者は、開業当初に2泊3日の合宿として滞在した企業です。
「IT系企業でしたが、日々の業務はパソコンが相手、社内のコミュニケーションもチャットが中心。年に一度くらいは社外でリフレッシュしようと、ビジネスミーティングだけでなく、皆さんで外食されたり、天文台へ星を眺めに行かれたりしていました。『思い出をつくることも大切だと感じた。』と言われた言葉が、印象深いです。」

一方、コワーキングスペースは、必要に応じて立ち寄る人から定期的に利用する会員まで、利用者それぞれに合わせた使い方を提供。プログラマーがコワーキングスペースで出会った歌手に依頼され、楽曲のオリジナル配信システムを作成するなど、会員同士が仕事でつながるケースも生まれていると言います。
こうした仕事場としてだけでなく、週3日のカフェ営業の他、誰でも気軽に集えるレンタルスペースとしても提供中です。レンタルBOXを設置し、ハンドメイド作家の作品や地元特産品の委託販売の請負や、イベント、セミナー、ワークショップなどに利用できるスペースとしての開放など、「集まれる場所が少ない。」と谷口さんが感じていた地域課題の解消に向け、様々な工夫を凝らしています。
「数々の取組により、コバコから“羽ばたいた”人もいるんです。」と谷口さんは声を弾ませます。その一例が、地域おこし協力隊の隊員たちです。通常、地域おこし協力隊は、役場の嘱託職員として、役場に籍を置いて仕事をします。しかし、谷口さんが提案したのは、役場ではなく、コバコを活動拠点にしたフリーランスとしての働き方でした。そして、令和4年4月、地域おこし協力隊の新たな働き方に挑んだ隊員2人が任期を終え、プログラマーとアウトドアビジネスの事業者として、佐用町で起業を果たしたのです。

さらに、同年7月には、コバコのシェアキッチンを利用して、週に一度カフェを開いていた女性が、佐用町内の古民家を購入し自分の店をオープンさせました。
夢を実現した人を、コバコから送り出せるようになったことを喜ぶ谷口さん。それは同時に、様々な困難を乗り越えてきた日々でもありました。

落ち着いた雰囲気の宿泊スペース
コバコ内でのカフェ営業を足がかりに、ご自身のお店を始められた

乗り越えたピンチは支援に活かす

開業から半年が過ぎた頃、コバコを共に起業した仲間が離れ、チームが解散。谷口さんは一人になってしまいました。
「開業当初はほとんど売上が見込めず、仕事といってもボランティアのようなもの。半年も続けばいい方だと起業のノウハウ本に書かれていますが、本当にそのとおりでした。」と、苦笑いと共に振り返る谷口さん。一人になっても事業を諦めなかったのは、「故郷である佐用町に根を下ろした自分が取り組むべきことだ。」と思っていたからだと言います。
「チームが解散したことで、起業の難しさを身をもって知ることができました。そのおかげで、労務に関する助言や従業員との人間関係に関するアドバイスなど、自分が起業したからこそ伝えることができたと思っています。」

そして、もう一つが新型コロナウイルスの蔓延でした。順調に増えていた宿泊者も、令和2年を境に激減。令和3年5月には、ランチを提供するカフェへのリニューアルにも取り組みましたが、来店者の増加にはつながりませんでした。それでも新たに設置した「泊まれるコワーキング」の看板や、オンラインによるイベント開催など、できることを重ね、コワーキングスペースの存在を発信し続けた結果、ようやく利用者の数も戻りつつあり、人の動きも回復の兆しがあるそうです。
「どんなピンチを迎えても、起業したことに後悔はない。」と、谷口さんは言い切ります。
「地域での起業は、その地域の同業者たちとの競合になります。競合を避けた事業は、ニーズがないということなので経営は厳しくなります。相手あっての商売なので、独りよがりにならないことが大切。だからこそコバコのようなコワーキングスペースで、いろいろな人と出会い、話をすることが大切だと思っているんです。」
そう話す谷口さんには、更なる目標があります。

気軽に利用できるコワーキングスペース
コバコを会場に行われたセミナーの様子

起業に挑戦したくなるまちへ

令和2年、佐用町では起業家を応援するイベント「さよう星降る町のビジネスプランコンテスト」がスタートしました。谷口さんが役場とともに、3年がかりで実現させたコンテストです。事務局として2年間関わり、限界集落をまるごと宿泊施設に活用する起業家や、森林活用に挑むシニア世代の起業家など、多くの挑戦者たちを輩出しています。
「新しいことへの挑戦を傍観するのではなく、共感し、応援しようとする雰囲気を地域につくるのはとても大切なこと。そうした雰囲気が、地域そのものを変えていくと思っているからです。そのきっかけづくりをしたかったんです。」
コンテスト当日は地元の人が応援に訪れたり、遠方からオンラインで参加する人も増えたりするなど、挑戦したい人を傍観しない雰囲気が生まれ始めています。

現在、事務局の役目を終えた谷口さんは、ビジネスづくりを応援する新しい取組を始めようとしています。
「佐用町の周辺地域も巻き込みながら、新たな事業に挑む人をもっと増やしたいんです。多くの人が取り組んでいる雰囲気が地域に生まれれば、『自分にもできるかもしれない。』と挑戦しやすくなると思います。」
今、佐用町では、コワーキングスペースやシェアオフィスなど、人が集まれる場所を創りたいという起業家が増え始めたと言います。さらに、雇用を生み出す事業に取り組む人も増えれば、市外に出て行かざるを得ない高校生たちが、佐用町内の新しい業態の事業に就職し、そこから起業する流れができるかもしれないと、谷口さんは期待を膨らませています。
「最近は、若いUターン者や移住者も少しずつ増え始めたと感じます。ビジネスプランコンテストは、事業に取り組む力を町外で身につけた人が、地元に戻って起業するきっかけにもなると思うんです。自分の出身地を想う気持ちは、誰にでもあるはず。それを行動に移すきっかけにしてもらえたらいいなと思っています。」
「コバコがなければ、佐用町に戻らなかった。帰れる場所ができた。」
開設当初のスタッフの言葉が、うれしかったと話す谷口さん。まちが少しずつ変わっている手応えを感じる中、誰もが自分のやりたいことに挑戦できる佐用町を目指し、これからも挑戦する人とまちの応援を続けます。

「さよう星降る町のビジネスプランコンテスト」の表彰式
地元の小学生がコバコを見学

POWER WORD

地域ではたらくをもっと自由に

地域での起業を、もっと自由で気軽なチャレンジにするため、自らも日々チャレンジを続ける谷口さん。個人起業家やベンチャー企業に求められる、変化への対応力を備えるために必要なものがあると話します。事業のスキルと経験に加え、もう一つ意識したい大切なものについて、語っていただきました。

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この記事を書いた⼈
内橋麻衣子