葛藤や戸惑い、喜びもすべてが成果。兵庫「すごいすと」インターンシップ最終成果報告会レポート

「受け入れ先すごいすとの想いに共感したから、参加した」
「自分自身で、いまできる“最大”を探すことの大切さに気づいた」
「利用する側から提供する側に、視点を変えることができた」
「社会貢献とは、自己形成や他者理解のために行うのかもしれない」
「出来事の奥に向き合う習慣がついた」

これらは、すごいすとインターンシップに参加した学生による最終成果報告会にて発せられた言葉の一部です。学生一人ひとりが自らの経験をもとに、すごいすとインターンシップの「成果」を語りました。当日の会場の様子と、受け入れ先すごいすとと学生による振り返りをレポートします。

兵庫県によるウェブマガジン「すごいすと」がスタートしたのが2013年。これまでに173人、38団体(2026年3月末時点)のすごいすとを紹介してきました。2025年からは、兵庫県各地の「すごいすと」のもとで、若者が仕事や地域活動を体感することのできる、兵庫「すごいすと」インターンシップという初の試みがスタート。7月から12月までの24日間の活動期間を目安として、学生がお手伝いとしてではなく主体的に活動することを主眼に実施されました。19人の学生が12人のすごいすとのもとで活動に参加しています。
最終成果発表会は、インターンシップに参加した学生のみならず、すごいすとや一般の方も参加し、2026年2月7日(土)にデザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)(兵庫県神戸市)にて開催されました。

※兵庫「すごいすと」インターンシップ及びインターンシップに参加した学生のうち3名のインタビューについてはこちらから。

学生、すごいすと、そして一般参加の方も。報告会で声が行き交う。

報告会では、一人ひとりの学生が事前にまとめた発表資料を投影しながら、実施内容や気づいたことを発表しました。聴衆からの質疑応答や受け入れ先すごいすとによる講評も。交流タイムでは、学生同士はもちろんのこと、すごいすとや一般の方とも交流が生まれました。

成果報告会の様子。1.同じ受け入れ先で活動した2人。/2.「地域で感じた現場の温度を伝えてほしい」と、兵庫県県民躍動課長からの挨拶。/3.母から受け継いだスカートとお気に入りのショールはどちらも受け入れ先のtamaki niimeのもの。/4. 会場には約30人が集まった。/5.「多世代に囲まれて感じたことは?」 別の活動に参加した学生からも質問が飛ぶ。/6. 淡路島のうみぞら映画祭のクラウドファンディングに取り組んだ学生。思いを伝えるだけでなく、受け手について考える大切さを実感。/7. 家島での島暮らしを経験。娯楽が少ないからこそ、釣りや盆踊り、BBQなどをめいっぱい楽しんだ。/8. 受け入れすごいすとの中村保佑さん。受け入れた学生に手書きのメッセージを。/9. 学生が素直に「気づいていませんでした」と指摘を受け入れて改善していた姿が印象に残っていると話すNPO法人シミンズシーズの柏木輝恵さん。/10. 受け入れ先すごいすとの藤本遼さんからは「すべてを学びとしてきれいにまとめないで。モヤモヤや煮え切らない気持ちも大事にして欲しい」と。

そこで何が生まれたか。受け入れすごいすと×インターン学生が振り返りました。

「インターン学生の取り組みに刺激を受けて、別の活動にも変化が」
中村保佑さん(甲南げんき村:神戸市東灘区にて地域の居場所を運営。カフェやイベント等を実施)

中村さんの記事(掲載日:2020年8月15日)はこちらから

中村さん
インターンとして長期的に学生さんが(甲南げんき村に)入るのは、私としても初めてでした。利用者さんとたくさんコミュニケーションをとって、積極的に活動してくれました。
学生
困窮家庭への食支援を行う活動では、20人くらいのお母さんにヒアリングしてレポートを作成しました。大学で社会学を学んでいるので、研究にもつなげたくて。

――彼女の活動で、どんな変化が生まれましたか?

中村さん
利用者さん一人ひとりと話をしてくれて、寄り添う力も分析力もすごかったです。支援の食品を取りに来られた方に、それを渡すだけじゃなくて、少しでも時間をとって話を聞くことも支援になると感じました。私たちの別の活動には、大学のボランティアサークルが関わってくれているんです。彼らも刺激を受けて、携わっている活動への参加者さんにアンケートをとってよりよい活動にしていこうという変化が生まれています。
学生が地域の居場所に参画する、一つのいい形を作ってくれたと思います。
いつか、無力感や挫折にも向き合っていく力に。
藤本遼さん(株式会社ここにある:尼崎市を拠点にまちづくり、コミュニティデザイン等を行う。「ミーツ・ザ・福祉」、「みんなの尼崎大学」等を運営)

藤本さんの記事(掲載日:2017年6月25日)はこちらから。

学生
インターン前後で、傍から見たら大きな変化がないように見えるかもしれないんですが、自分自身としては大きく変わりました。

――どんなふうに?

学生
自分のなりたい姿や価値観が見えていなかったんです。でも、インターンシップを通じて、自分の理想を考えながら日々行動していこうと思うようになって、いまはそれを体現している途中だと感じています。
藤本さん
仕事や暮らしにおいて、多くの人が自分自身に嘘をついたり他者との関係性を諦めたりしてやり過ごしているんじゃないかという問題意識があるんです。だから、仕事や地域の活動の場でも、個人が自分自身について深めることが大事だと思っています。彼女は、そこに向き合って頑張ったと思います。
学生
私自身は、ずっと調子良く生きてきたと思っているんです。大きな挫折とかもない。でも、いつか無力感や挫折を感じるようなことが起こった時に、逃げずにちゃんと向き合えるような準備をさせてもらったと思っています。
藤本さん
彼女の柔らかさや人を明るくするパワーは、とても素敵だと思う。それは引き続き大事にしてもらいたいなと思います。
「僕の方が、学ばせてもらった」
鴻谷佳彦さん(NPO法人imagine丹波:丹波市にて、高校生向け探究学習プログラムを行う)

鴻谷さんの記事(掲載日:2021年2月5日)はこちらから。

鴻谷さん
探究学習プログラムで高校に行くのですが、高校を卒業したばかりの彼女は、生徒に近い、ちょっと上の大人としての距離感でいい関係を作ってくれていました。そのあり方は、僕の方が学ばせてもらったくらい。
学生
公務員として教育系の事務職に就きたくて、この機会に実践の場を経験できたらと応募しました。生徒との関係づくりを通して、教員でもない、第三者的な立ち位置で大人が学校に入る意義を感じることができました。

――例えば、どんなことがありましたか?

学生
探究の事業に携わらせてもらったんですが、合間に学業や進路とは違う、例えばメイクやファッションなどの話をすることもありました。
鴻谷さん
そういう身近な話から、生徒との信頼関係を築いてくれたんですよね。
学生
先生には言えないことも、話せる大人がいることは学生にとって大切だなと感じました。また、活動を通して、自分自身への理解を深めることができたと感じています。

――と、いうのは?

学生
結果的には開催できなかったんですが、講座を企画して実施しようとしたんです。不安もあったのですが、自分ができると思っていなかったことも、「やってみたらできるんだな」と感じられるようになりました。それは、自分にとって自信になりました。
学生が立ち上げた企画が月1回の継続イベントに。
田村幸大さん(NPO法人なごみ:西宮市を拠点に、まちづくり活動を行う。まちづくりをテーマに地域のさまざまな世代が一緒になって学ぶ「まちがく」、まちのカフェなどを運営)

田村さんの記事(掲載日:2020年7月10日)はこちらから。

――お2人はどのような活動を?

学生1
私は地域での学び合いを行う「まちがく」の活動で「市長になってまちづくりを考えよう!」という授業を行いました。その一環で、市の議員さんにアドバイスをいただきに行くこともできました。
学生2
私自身は、ずっと子ども食堂に興味があって、高校生の頃からボランティアもしているんです。なごみでも以前は実施していたけれど、コロナ禍でなくなったと聞いて、立ち上げたいなと思いました。
田村さん
それが、インターンシップ期間が終わった現在も月1回で継続しているんです。
学生2
まちがくで、「理想の食堂」を立ち上げる授業をしたのをきっかけに、実現に向けて動き出しました。実際にやってみると、予想以上に大勢の方に来てもらったり、提供する値段を決めるのに悩んだり。理想を現実にしていく難しさを感じました。でも、それをインターン後も続けられているのは、とても嬉しいです。
学生1
私自身も食堂に参加させてもらっています。
田村さん
発案者だけじゃなくて、みんなで作ることを大事にしたいなと思っているので、今回、「まちがく」の授業で設計から一緒にする人たちを募ることができたは、活動を継続する上で大きかったなと思いますね。これまでも、インターンに来てくれた学生の発案やエネルギーを、団体の活動につなげていくことができたらと思ってきました。学生の活動が終わったらその活動も終わりとなりがちだけど、今回、継続できる形を作ることができました。3人のインターン生(1人は体調不良のため報告会を欠席)が取り組んでくれたことは今後なごみの活動を振り返る時にも思い出すことになりそうです。

答えは出ていないとしても。この経験が、いつか何かにつながるかもしれない。

最終成果報告会では、すごいすとインターンシップならではの成果を多く聞くことができました。学生だけでなく、すごいすとの活動自体にも変化が生まれていた事例もあり、インターン生が主体的に活動に飛び込んだからこその成果を知ることができました。
そうした「成果」や「成長」を伝えてくれる合間に、ぽろっとこぼれ落ちてきたエピソードもまた、印象的でした。例えば、利用者の方に就職相談をしたら、とても親身になって話を聞いていただけて嬉しかったこと。島のスーパーの閉店時間がGoogle mapに掲載されていたよりも早くて買い物に行けず、思わず口コミを書き込んだこと。雪の日、インターン先に向かって歩いていたら、通勤途中のスタッフが車に乗せてくれてありがたかったこと。それらは、成果や学びとは言えないものかもしれません。しかし、その瞬間に生まれた小さな心の動きもまた、彼らが行動したことによって生まれた活動の軌跡だと感じました。

受け入れ先すごいすとの一人、藤本遼さんは、学生の発表に対する講評にて「すべてを学びとしてきれいにまとめないで。モヤモヤや煮え切らない気持ちも大事にして欲しい」と伝えてくれました。それを受けてか、「まだ、答えは出ていない」と呟くように話してくれた学生もいました。「働くって、私にとってはとても大変なことだと思うこともありました。今回の経験が私のなかでどんな意味を持つかは、まだわからない」と。「成果」として語られる以外の多くの時間に、学生一人ひとりが感じた葛藤や戸惑い。もちろん、喜びや嬉しさも。それらが混ざり合い、いつか何かにつながっていくのかもしれません。
今回、「知らなかった自分を知ることができた」、「自分自身の価値観を考えるようになった」などの言葉も多くの学生から聞くことができました。インターンシップの期間が終われば終わりではない。組織や業務へのインターンシップではなく、地域や人を巻き込んで活動している「すごいすと」という人との関係が生まれるインターンシップ。だからこそ、そこで生まれた経験や人とのつながりは、時間をかけて学生たち自身への生き方に反映されていくのかもしれない。そう感じた最終成果報告会でした。